累風庵閑日録

本と日常の徒然

『オトラント城綺譚』 ウォルポール 講談社文庫

●『オトラント城綺譚』 ウォルポール 講談社文庫 読了。

 なるほどなるほど、ゴシック小説とはこういうものか。一度その祖型を読んでおこうと思って手に取った。描写も会話も大仰で回りくどく、ちと読むのに骨が折れる。けれど、ストーリーはダイナミックなうねりを見せ、意外なほど面白い。最後の愁嘆場の大変な盛り上がり様は、大仰な台詞回しがあってこそ、である。

 オトラント城主マンフレッドの造形が大変憎たらしく、ページをめくらせる力になっている。それはすなわち、料簡が狭く、思い込みが激しく、他人を信じないどころか邪推してばかりで、すぐに怒って喚きたて、息をするように嘘をつく、という姿。こういうちっぽけな権力者像って、どこかで見たような気がする。