累風庵閑日録

本と日常の徒然

「スミルノ博士の日記」 ドゥーセ

●朝からじんわりと暑い。こういう暑さも悪くない。まるで夏休みの朝のような雰囲気で、気分がいい。いまならまだ暑さもさほどではないから、こんな呑気なことも言ってられるのだ。

東都書房の世界推理小説体系第五巻から、ドゥーセの「スミルノ博士の日記」を読んだ。百ページちょっとしかない作品だが、なにしろ三段組みだから、読むのに二日もかかってしまった。内容は、悪く言うと華がない。よく言えば堅実で定石通りの筆の運びである。いくつかの要素が未整理のままになっているようだが、全体的には読んでいて襟を正したくなるような、かっちりしたミステリ。

 関係者の行動を時刻ごとに細かく追う捜査過程をじっくり描き、ホームズ流の推理をひらめかす名探偵の言動をきちんと描く。時計の針を壊さずに文字盤を撃ち抜ける瞬間は~だけ、ってなロジックが楽しい。そして結末は、有名なあの大ネタである。事前に知っていたのが残念。なんとも残念。知らずに読んで驚くことができたら、評価は全く違ったものになったはずだ。

 もっとも、読みどころはこのネタだけではない。日記の行間からにじみ出る博士の人間性がじわじわと面白いし、別の人物の造形に関する真相はなかなかに不気味である。

 ところで、こんな重くてかさばる本を平日に持ち歩いて読むなんてできないので、同時収録のチェーホフを読むのは今度の週末に先送りする。あるいは気まぐれで、来月に先送りするかもしれん。

横溝正史の短編「瞳の中の女」について、データを整理して某所にアップ。

●旧PCのリサイクルを、メーカーに申し込んだ。いずれ近いうちに専用の伝票が郵送されてくるはず。また、データ抹消作業を始めた。それ用のソフトを使って、企業で最も一般的に使われている手法とやらで作業にとりかかると、いつまで経っても終わらない。ざっくり見積もって明日の朝までかかりそうなので、今晩はこのまま放置して寝ることにする。