●確認したいことがあったので、横溝正史の人形佐七もの「猫と女行者」を読んだ。読んでなるほど、と思う。
横溝正史の長編「迷路の花嫁」から、祈祷師殺しの要素のみを抽出して素材とし、新たに肉付けして物語を再構築したのが、「猫と女行者」である。「迷路の花嫁」の連載完結が昭和二十九年九月で、「猫と女行者」の雑誌掲載が同年十一月だというから、ずいぶん時期が近接している。
全体の構造は全く違うが、犯行現場の状況や被害者の様子、さらには(伏字)まで、両者は実によく似ている。ひとつポイントとなる相違点が、「猫と女行者」では猫も一緒に殺されていること。先日コピーした「迷路の花嫁」の初出テキストと比べると、ちょっと興味深い。
「猫と女行者」は一度読んだはずだが、まったく覚えていない。読んだこと自体印象に残っていない。最近偶然、某サイトで両者の類似が指摘されているのを見かけて、確認のために再読した次第である。