累風庵閑日録

本と日常の徒然

『運河の追跡』 A・ガーヴ 論創社

●『運河の追跡』 A・ガーヴ 論創社 読了。

 素晴らしいテンポのよさで、すいすい読める。金曜まで読んでいたチェホフのまだるっこさと比べるのは意味がないのだが、それでもつい比べてしまう。いろいろ野暮用があって読了するのに二日かかったけれども、読書に集中できる状況なら一日でさっと読めるだろう。あまりにもテンポがよすぎて、あらすじを読んでるような気分になってしまった。

 主人公クレアの不安や恐れをあまり前面に出さず、彼女の行動が主に描かれる。残された手紙などの手がかりから子供の行方を推理し、現場に赴いて地道な捜索活動に取り組む描写には、いわゆる「足の探偵」の面白さがある。クレアの夫アーノルドの造形が悪役としてなかなかよくできていて、実に憎たらしい。ところが彼は早い段階で物語の表面に登場しなくなってしまう。彼との対決がメインだったら、もっと感情移入する読み方をしたと思うのだが、実際はストーリー展開への興味でページをめくることになった。

 ガーヴは、論創海外をすべて読むという取り組みをやっていなければ、まず手に取らない作家であった。様々な作家に出会えるのが、「レーベル読み」の効能と言える。もちろん、その出会いが必ずしも読書の広がりにつながるわけではないけれど。ガーヴは読んで損はないが、既訳本を探そうとまでは思わない。

コールスローを初めて作ってみた。塩をしたキャベツを、マヨネーズ、酢、砂糖、胡椒のタレで和える。うん、これは悪くない。レパートリーに加えることにする。粉チーズを振ってもいいかもしれない。大根で作ったらどうなるだろうか。