累風庵閑日録

本と日常の徒然

『青い外套を着た女』 横溝正史 角川文庫

●朝目覚めたらまたひとっ風呂。低温だからずっと浸かってられる。朝飯を美味しくいただいて、チェックアウト。今度は甲府回りで帰宅。ううん、ここはいい。再訪したい場所がまた増えてしまった。

●旅のお供に横溝正史
『青い外套を着た女』 横溝正史 角川文庫 読了。

 今年の四月に、DVDになったTVドラマ「ミイラの花嫁」を観る前の予習として、原作の短編「木乃伊の花嫁」を読んだ。この作品は角川文庫の『青い外套を着た女』に収録されている。一編だけ読んで放置していたこの本を、せっかくだから通読してみた。初読がいつだったかまるで憶えていないが、二十年以上前なのは確実。

・「青い外套を着た女」
  快活な青年が活躍する、明朗アクション。ページ数の割には動きが多くて展開が速い。
・「クリスマスの酒場」
  幾重にも捻りを重ねた、なかなかの秀作。
・「花嫁富籤」
  少々そそっかしいお嬢さんが、運命に翻弄される。全体のトーンがなんとも呑気。
・「佝僂の樹」
  正史のストーリーテラーぶりが遺憾なく発揮された、起伏の多い秀作。道具立てがやけに古風なので、基本構成をそのままに時代伝奇小説に仕立てても通用しそう。
・「覗機械倫敦奇譚」
   海外作品を戯作調に訳した、という体裁の奇譚。内容と文章と、どちらもそれらしく仕上げてしまう手腕に、正史の器用さが際立つ。

 それにしても正史のネーミングには静馬というのが実によく使われる。「仮面舞踏会」には柚木静馬が、「佝僂の樹」には鵜飼静馬が、それぞれ登場する。短編を拾い集めて「静馬アンソロジー」でも編めるんじゃないかという勢いである。