累風庵閑日録

本と日常の徒然

『黒い蘭』 R・スタウト 論創社

●『黒い蘭』 R・スタウト 論創社 読了。

 『怪奇な屋敷』の後だと特に、本書のように首尾一貫して、キャラクターが定まった小説を読むのは楽しい。それにもちろん、ミステリならではのロジックの面白さもきっちり味わえる。表題作が、収録の三編中のベスト。殺人実行者の設定が、そうきたか、と嬉しい。(伏字)という展開は好みでないが、ウルフとアーチーとの掛け合いがあまりに軽快なので、気にする間もなくするすると読まされてしまった。

 続刊の『ようこそ、死のパーティーへ』を早く読みたいと思うが、そこはそれ、順番というものがある。読むのは来年になるだろう。他に、光文社文庫の二冊やポケミスが何冊か、積ん読になっている。私はスタウトの熱心な読者ではないから、既訳本を全部集めようなんて望みはないが、手持ちの本だけは折を見て読んでいきたい。