●『傷ついた女神』 G・シェルバネンコ 論創社 読了。
イタリアン・ノワール、だそうで。いわゆるノワールという枠でくくられるミステリには、正直言ってあまり興味がない。ノワールをよく分からないままとりあえず読んでみると、これって一昔前ならハードボイルドの枠でくくられるような物語ではないか。この辺りのラベリングに時代を感じる。
元医者が主人公だが、味わいはまったくの私立探偵小説である。こういうタイプの小説は久しぶりなので、それだけで新鮮で、面白く読めた。ちょいちょい主人公の視点を離れた記述が挟まる自由な書きっぷりだが、全体の流れは実にオーソドックス。これなら、すでに論創海外から出ている二冊目も期待できる。登場人物達の造形がしっかりしており、そのおかげでやけに密度が高い。読了に三日もかかってしまった。
●横溝活動への意欲が依然として高い。こうやって気持ちが高まっているときにこそ、面倒くさい宿題を済ませるべきであろう。という訳で、神奈川近代文学館に文献のコピーを依頼した。また別件で、某古書店の目録に横溝関連の古雑誌を一冊注文している。ここは先着順なので入手は半ばあきらめているけれども。