累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ソロモン王の洞窟』 H・R・ハガード 創元推理文庫

●『ソロモン王の洞窟』 H・R・ハガード 創元推理文庫 読了。

 「オトラント城綺譚」がゴシック小説の元祖であるのと同じ意味で、本書が秘境冒険小説の元祖なのかどうか、どうもはっきしりない。けれど、後年の作品に多大な影響を与えた、物語の「型」であることは間違いないだろう。内容はよくある種類の面白さに満ちている。例えば主人公の一行がピンチを脱する場面で(伏字)を利用するなんてのは、いかにもどこかで読んだような展開である。だがそれは逆で、本書の展開を後年の作品が再利用しているわけだ。

 ストーリーは序盤こそややスローテンポでまどろっこしいが、本格的に探検の旅が始まると俄然加速し、文字通り波乱万丈の展開となる。読者が退屈しそうな個所は、吃驚するくらいの省略で軽々とかっ飛ばして、話がぐいぐい先に進む。こういうのを読むと、出会うのが遅かったと思ってしまう。小学生か中学生の頃に出会えていたら、無我夢中で読み耽っていただろう。

●本書と続編の「二人の女王」とは、横溝正史が戦前に書いた秘境冒険小説「南海の太陽児」の元ネタになっているという。「太陽児」の内容をすっかり忘れているからいずれ再読するとして、その前に「二人の女王」も読んでおきたい。本は先日買ったばかりだから、その気になればいつでも読める状態にある。まあ実際は、早くても年内に読めるかどうかというところだろう。

●お願いしていた本が届いた。
『ほりだし砂絵 なめくじ長屋捕物おさめ』 都筑道夫 盛林堂ミステリアス文庫