累風庵閑日録

本と日常の徒然

『加田伶太郎全集』 福永武彦 扶桑社文庫

●『加田伶太郎全集』 福永武彦 扶桑社文庫 読了。

 一番秀逸なのは第一作「完全犯罪」である。こんなにはっきり書いてある矛盾に気付かなかったとは、参りました、ってなもんで。容疑者を絞り込むロジックがシンプルなのも好ましい。他に秀逸作は、わずかな情報から真相を推理する経路の面白さを味わえる「失踪事件」と、伏線が細やかな「眠りの誘惑」、そして解決の決め手が見事な「赤い靴」である。

 ところで「温室事件」で理解できない点があるのだが。紐を引くと開く天窓が、紐が一杯に引かれていたので閉まっていたというのは矛盾してないか? 開けるための紐と閉めるための紐と、二本あったということか。あるいは紐が輪になっていて、閉める方向に引っ張られていた描写を、省略したということか。

「女か西瓜か」の、作者が想定した真相はどちらか? 都筑道夫の解説では作中に手掛かりがあるというが、どんなもんだろう。私は(伏字)という記述を根拠に(伏字)と判断したのだが。

●今日はこの日記をアップしてから、ちょいと出かける。夕方から某イベントの打ち上げに参加するのである。横溝系の飲み会が楽しみで参加するのだが、お取り置きをお願いしている某同人誌を入手する目的もある。