累風庵閑日録

本と日常の徒然

『七人目の陪審員』 F・ディドロ 論創社

●『七人目の陪審員』 F・ディドロ 論創社 読了。

 街の安寧を何よりも優先する、健全な市民社会。そのいい加減さ、うさん臭さ、愚かさ、おぞましさを、シニカルに描く。途中までは皮肉な書きっぷりを笑って楽しめていたのだが、だんだんしんどくなってきた。ここに書かれている状況は、遠い異国の遠い昔の絵空事に限ったものではない。そのことをつい連想してしまい、作品の質とは関係ない部分でうんざりしてしまった。作品にとってはとんだとばっちりで、申し訳ないけれども。