●『エラリー・クイーンの事件簿１』 Ｅ・クイーン 創元推理文庫 読了。
「消えた死体」
映画脚本を、クイーンとは別の書き手が小説に仕立てたのだそうな。ということはつまり、パスティシュのようなものである。最初からパスティシュだと思って読めば、これがなかなか面白い。
まず不可能犯罪の謎が魅力的。がちゃがちゃと動きの多い展開はいかにも映画らしく、軽快で明るい。凶器の処理はどこかで読んだようなネタだが、なるほど、だからこそ（伏字）させたのかと、ストンと納得するのはミステリならではの面白味である。
ところでこの作品、どうやらクイーンの某作品のネタを流用しているらしい。クイーンの未読はまだまだ多く、その某作品も読んでいない。ここでネタを知ってしまったのは残念なことだが、そういう巡り合わせだと思うしかない。今後某作品を手に取るときには、同じネタの変奏を楽しむという読み方をすればいいのだろう。
「ペントハウスの謎」
以前、ハヤカワ文庫の『大富豪殺人事件』で読んだ。再読なので、Ｂ級スリラーだということが最初から分かっている。その前提で読むと、それなりに楽しめる。その場にあって当然の物がなぜか紛失しているという趣向や、犯人を推理する流れなどに「クイーン臭」が感じられて、それだけでまあ満足と言っていい。多くを望んではいけない。
●これをきっかけにふと思い立って、国会図書館にクイーン関連でいくつか複写を依頼した。来週には入手できるはず。
