累風庵閑日録

本と日常の徒然

『妖異百物語 第二夜』 鮎川哲也・芦辺拓編 出版芸術社

●『妖異百物語 第二夜』 鮎川哲也芦辺拓編 出版芸術社 読了。

 「第一夜」を読んだのはもう三年前になる。今回ようやく「第二夜」を読んだ。帯には「恐怖小説名作選」と謳われているが、ミステリからSFまで、バラエティに富んだ作品が集められている。戦前の、いろいろ未分化だった頃の探偵小説を思わせて、なかなか楽しい。

 ベストは山口年子「かぐや變生」で、隠棲した元大学教授の境遇が落ち着いた語り口で描かれるうちに、次第に不気味さが表に出てくる。松本恵子「子供の日記」は、昼食の素麺について、出汁をひく場面から薬味の準備まで、なぜか詳細に語られるのが不思議な味わい。そして季節外れだけども素麺が喰いたくなる。

 その他、個別にコメントは書かないが気に入った作品は、丘美丈二郎「佐門谷」、矢野徹「海月状菌汚染」、田中文雄「キチキチ」、山村正夫「畸形児」といったところ。