累風庵閑日録

本と日常の徒然

恙なき遺体

●雑誌『小説幻冬』の創刊号と十二月号とに分載された、小松亜由美「恙なき遺体」を読む。現役の解剖技官でなければ書けない、様々なディテイルが実に面白い。だが、それはあくまで装飾としての面白さである。肝心の、ミステリとしての内容はどうか。

 これがなんと、予想を上回る面白さであった。異様な犯行現場と死因不明の変死体というのがメインの謎。その死因の意外性は十分だし、なにより伏線沢山なのが好みに合っていて嬉しい。まさかこれも伏線だったとは、という意外性もある。次回作が楽しみ。

 犯人は誰かという興味については、ええと、作者が書きたいポイントではなかったのだろう。なぜそう思うかは終盤の展開にかかわるので、ここには書かない。

●ファンの方に教えていただいて、『金田一少年の事件簿 学園七不思議殺人事件』を読んだ。このシリーズは初めてである。不可能犯罪に、暗号に、連続殺人に、怪人の跳梁。にぎやかで楽しい。