累風庵閑日録

本と日常の徒然

『仮面の佳人』 J・マッカレー 論創社

●いろいろスケジュール調整をして、今日も休日。そのしわ寄せが後日やってくるわけだが、今は気にしない。

駒場日本近代文学館に行く。目的は、所蔵されている『講談倶楽部』を閲覧し、横溝正史「幽霊騎手」の初出テキストを確認することにある。

 角川文庫『憑かれた女』に収録されている「幽霊騎手」では、主人公の風間と、友人で新聞記者の南条との会話で意味が通じない箇所がある。戎光祥出版横溝正史研究5』の、「幽霊騎手」に関する記事によると、やはりこの個所は初出と異なっているそうな。実際確認してみると、角川文庫版は会話の途中で複数の文が欠落しているのであった。不思議な編集である。

 これで目的を達した。そのついでに全体を複写しておいた。上記の点以外は現行版と異同がないというから、ぜひ複写しなければならない訳でもなかったのだが、せっかくここまで来たことだし。

●続いて別の某施設に出向く。これも横溝関連の調査である。けれどこちらでは思惑が外れ、目的を達することができなかったので、詳細は省略。

●『仮面の佳人』 J・マッカレー 論創社 読了。

 悪の組織の女首領が、どんな計画を目論んでいるのかが興味の中心となる。組織の部下にも詳細を説明せず、着々となんらかの計画を進めてゆく女賊。ストーリーの軽快さはなかなかのものである。登場人物の中では、サルウィック教授の個性が際立つ。物理学者にして犯罪者志願のこの人、言動が奇天烈で、時々痛々しさを感じさせる。

 結末は時代がかっていて生ぬるい。だが、つまらない訳ではない。最初から、量産作家の量産型軽スリラーだと思って読めば、微笑ましいものである。ちょっとした不可能興味が二種類盛り込まれているが、真相はどちらも安直。だが、つまらない訳ではない。最初から、(以下同文)。

 余談だが、これで論創海外ミステリを百五十巻まで読んだ。このままのペースが続けば、新刊に追いつくのは来年の半ばになる。気の長いことである。