●『リモート・コントロール』 H・カーマイケル 論創社 読了。
傑作、と言いたいところだが、保留。重要な点の説明が非常になおざりになっているように思えるのだが。結局、犯人は(伏字)のか? この点によって読後の感銘が薄れたことは事実だが、それでも作者が用意した目論みには感心した。こういうシンプルなネタは好きだ。
また、ある人物の行動の動機を探るという、いわば人間の謎に迫る展開が実に面白く、ぐいぐい読める。野暮用に時間を取られてやむを得ず二日かけたが、何もなければ一気に一日で読み終えていたであろう。
キャラクターに魅力があるのも得点のひとつ。特に主人公のひとり、クインの境遇にぐっとくる。家族がいる友人を思い、顧みて自らの孤独を思い、ぐじぐじといじけてしまうマイナス思考には、なにやら身につまされるものがある。
偶然だが、二月にはこの作者の二冊目の翻訳が論創海外から出るらしい。今のペースで行くと年内には読めるはず。楽しみである。