累風庵閑日録

本と日常の徒然

『復讐の女神』 A・クリスティー クリスティー文庫

●『復讐の女神』 A・クリスティー クリスティー文庫 読了。

 奇妙な作品。探索すべき事件は何なのかを探索する物語である。こういう展開にすることでクリスティーがどういう効果を狙ったのか、よく分からない。中盤で状況が見えてきて、同時に現在進行形の事件も起きるのだが、どうも焦点がぼやけているようだ。結末の緊迫感と真相のいかにもなネタとで、ミステリを読んだという気分にはなれた。

 クリスティー八十一歳のときの作品である。どこまで自覚的だったか分からないが、老人特有の「最近の若い者はけしからん」という視点がそこら中に散りばめられていて、ちとうんざりした。