どうも読むタイミングが中途半端だったようだ。去年の十二月に、原型となった中編「運命の裁き」を読んだ。原型版の内容をぼんやりと覚えているので、少なくとも前半は新鮮味に乏しい。原型版の内容をぼんやりとしか覚えていないので、どこがどう改稿されたか、という読み方もできない。犯人は(伏字)でしょ、という頭があるので、読み方がどうも上滑りになる。こっちの長編版を先に読むべきであった。後の祭りである。
内容は、事件も登場人物もなかなかに悲惨で、ずしりと胸に応えるヘヴィーなもの。前作『凶悪の浜』よりも、いっそう「ロスマクらしさ」が色濃くなっており、時に哲学問答のような趣すら漂ってくる。
最も興味深かったのは、原型版と長編版との大きな差異について。だが内容に触れることになるので、詳しくは非公開。より悲劇的なのは長編版だが、ミステリ的な面白味は原型版の方が優っていると思う。
話はまだ終わらない。どうやら「運命の裁き」の前に、これも原型版と言える「怒れる男」という作品があるそうで。HMMに訳載されており、たまたまその号は買ってあった。偉いぞ、過去の俺。これもいつか、できればこの長編の内容を忘れてしまわないうちに、読んでみたい。