累風庵閑日録

本と日常の徒然

『噂のレコード原盤の秘密』 F・グルーバー 論創社

●『噂のレコード原盤の秘密』 F・グルーバー 論創社 読了。

 ミステリの衣を着たキャラクター小説といった案配。また、巻末の「フランク・グルーバー讃」を読むと、どうやらこれはハードボイルドの近縁種のようで。真相解明部分があまりにもあっさりしていて、これだけ!? と思ったのだが、もともとその点を重視した作品ではないということか。

 キャラクター小説だからこそ、読んでいる間はなかなか面白い。ジョニーが詐欺ぎりぎりの金策のため駆けずり回る様子なんざ、愉快軽快爽快な展開である。先日読んだ『殺人計画』の、格好の口直しとなった。そしてキャラクター小説だからこそ、さっと読んでさっと忘れてしまえる内容である。

 訳者あとがきを読むと、シリーズ未訳作を続刊で出す可能性に言及されている。この可能性はまだ生きているのだろうか。論創海外のレーベルで出たらもちろんお付き合いするつもりである。もし他の叢書やどこかの文庫で出たら、買うかどうか今のところは保留だけど。

 グルーバーは今回初読で、あとまだ創元推理文庫『コルト拳銃の謎』とイフ・ノベルズ『探偵人間百科事典』とが積ん読になっている。持っていない既刊を探してまで読みたいとは思わないが、手元にあるこの二冊はいつか読みたい。