累風庵閑日録

本と日常の徒然

反逆者の門

エドガー・ウォーレスって案外面白い。そのことに気付いたのは、去年『淑女怪盗ジェーンの冒険』を読んだ時である。ウォーレスはもっと読みたい。今回、昭和五年に平凡社から出た世界探偵小説全集第十三巻『鉄槌/反逆者の門』を手に取り、ひとまず「反逆者の門」だけ読んだ。

 何人もの悪党達が入り乱れ、宝石強奪と美人誘拐と、それぞれの犯行計画を進行させてゆく。背後にいるのは不良インド人貴族キシラスタン殿下と、犯罪界の大立者タイガー。だがそんな彼らの周辺では、警視庁の女探偵オロビイ夫人が不穏な動きを見せる。さらに、ヒロインであるホープ嬢の出生の秘密や、若き守備隊士官リチャードを巡る恋の鞘当てなんぞがからむ。まさしく大衆娯楽小説の要素が、様々に盛り込まれているわけだ。

 その時その時の無聊を慰める消閑小説、という役割を必要十分に果たす、軽スリラーの快作。とにかく分かりやすくとにかくスピーディーで、読んでいる間はきちんと面白い。さすがウォーレス、と思う。残りの「鉄槌」は、また日を改めて読むことにする。

●北海道立図書館から、依頼していた文献のコピーが届いた。依頼メールの送付からブツの入手までわずか三週間で対応していただき、ありがたいことである。だが、ああなんたることか、一部に不備があって、これじゃやり直しである。また依頼メールを送るところから始めて、早くても三週間待たなければならない。結局、満足のいく結果が得られるまでトータルで六週間以上かかるわけだ。前回実績と同等である。

●今月の総括。
買った本:六冊
読んだ本:十一冊