累風庵閑日録

本と日常の徒然

『灯火が消える前に』 E・フェラーズ 論創社

●『灯火が消える前に』 E・フェラーズ 論創社 読了。

 冒頭で殺人が起き、犯人がほぼその場で逮捕されて事件はすぐに解決する。少なくとも表面的には。その後、犯人とされる人物の証言に疑問を持った主人公のアリスが、関係者を訪ね回って真相を追い求めてゆく。ここからがメインの物語となる。

 問題の夜、パーティーに呼ばれたアリスは、主催者以外の招待客とは初対面であった。関係者達を経巡ることで、アリスが抱いた彼ら彼女らに対する第一印象は次々と変わり、深化し、上書きされてゆく。それぞれに欠点を持ち、それぞれに屈折を抱えた人々。この人物描写が、一番の読み所である。

 といっても本書はあくまでもミステリで、そっち方面のネタをきっちり仕込んでくれている。真相が判明するきっかけとなったある違和感、たったひとつの(伏字)に集約される、その手掛かりが嬉しい。