累風庵閑日録

本と日常の徒然

『聖者の復讐』 L・チャータリス 六興キャンドルミステリーズ

●『聖者の復讐』 L・チャータリス 六興キャンドルミステリーズ 読了。

 スケールの大きな話である。舞台は第一次大戦後のイギリス。もう一度大戦を勃発させて大儲けしてやろうと目論む悪徳資本家がいる。以前、セイントがその計画を妨害して半ば成功したが、代償として大切な仲間を殺されてしまった。今セイントは再び、陰謀の完全阻止と仲間の復讐のために立ち上がる。

 ストーリーは起伏十分で、特に終盤の盛り上がりなんざアクション映画のクライマックスのようである。全編を通して様々な交通機関がストーリーに関わってくるのが、アクティブな味付けになっている。登場するのは、自動車、船、飛行機、鉄道。

 また、知の闘争がきちんと描かれているのが面白い。たとえばセイントは敵に対して、罠としての手がかりを与えてやる。その手がかりは、敵がぎりぎり気付くほどには大きく、意図的な罠と見抜かれないほどには小さい。そして敵だって馬鹿ではない。セイントの妨害を封じ計画を実行するために、様々な策を弄する。電話を(伏字)意図があった、というネタにはちょいと感心した。

 変装の名人で、肉体派アクションもこなし、強大な敵と戦う義賊。巻末解説ではアルセーヌ・ルパンやラッフルズと並べられているが、私が読みながら連想していたのは「ルパン三世」である。