累風庵閑日録

本と日常の徒然

『九つの解決』 J・J・コニントン 論創社

●『九つの解決』 J・J・コニントン 論創社 読了。

 この作風、嫌いではない。大量の手掛かりに基づいて複雑な事件を再構築してみせる推理の展開は、お見事である。だが、ううむ、関心はするけど感動はしない。

 訳者あとがきの、真相を明かして論じた部分に書いてあるように、(伏字)。読者に要求されるのは、作者が仕掛けたネタを見抜くひらめきではなく、錯綜したひとつの物語を創り上げる創造力なのである。そして私はそんな要求に手も足も出ず、解決を読んでなるほどと感心するばかりなのであった。

●余談も余談、まぎれもない余談であるが、本書の刊行は去年の七月である。ということはつまり、論創海外の積ん読期間が一年にまで縮まったということである。素晴らしい。