累風庵閑日録

本と日常の徒然

『サム・ホーソーンの事件簿III』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サム・ホーソーンの事件簿III』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。

 いやはや、今週はやけに忙しくて、読書時間がちっとも確保できなかった。この一冊を読むのに四日もかかっちまった。でもそのおかげで、一編一編を割と集中して読むことができた。悪いことばかりではないのである。

「ハンティング・ロッジの謎」が最優秀作。丁寧に作り込まれた不可能状況が嬉しいし、伏線と真相とがどちらもきっちり決まって、お見事。手がかりの提示が秀逸なのが、「危険な爆竹の謎」と「真っ暗になった通気熟成所の謎」の二編。解決部分を読むと、さりげなくも決定的な手掛かりが配置されていたことが分かって、感心する。「防音を施した親子室の謎」は、犯人を限定する筋道がシンプルで気に入った。「密封された酒瓶の謎」は、真相にはあまり感銘を受けなかったが、謎の設定が魅力的。