累風庵閑日録

本と日常の徒然

『エアポート危機一髪』 H・ウェルズ 論創社

●『エアポート危機一髪』 H・ウェルズ 論創社 読了。

 題名から想像したパニック小説では全然なかった。ストーリーは割と平坦だし、主人公が真相にたどり着く経路にもちと甘いところがある。相手役の男が少々愚かでだらしなく、魅力に乏しいのも心細い。まあジュブナイルだからこんなもんだろう、というのが結論。ミステリ的な面白味よりもむしろ、主人公がパイロットの免許を取ろうと奮闘する、その緊張とときめきとが読み所。

 それにしても、約半世紀前のジュブナイルで描かれたアメリカの田舎町が、なんと平穏で、素朴で、健全なことか。読んでいると、こんな大人になって申し訳ありませんと言いたくなる(誇張表現)。

●結局、『J・G・リーダー氏の心』の感想を書くタイミングを逸してしまったので、一言だけ。エドガー・ウォーレスに対して今まで抱いていたイメージを一変させる、粒揃いの傑作短編集であった。このシリーズはもっと読みたい。

●近所の公園で、地域の夏祭りをやっているのをちょいと覗いてきた。が、五分で立ち去る。

 次第に暮色が濃くなる公園で、踊る人々の輪をぼんやりと眺め、櫓の上の太鼓の音をぼんやりと聞きながら、出店で買ったビールをやらかす。実に魅力的な状況である。が、今日は土曜日、飲んではいけない日なのだ。わざわざ自分でそんな状況に身を置きながら、そのうえで我慢するなんてのはアホらしい。