累風庵閑日録

本と日常の徒然

『殺意の海辺』 J・D・カー他 ハヤカワ文庫

●『殺意の海辺』 J・D・カー他 ハヤカワ文庫 読了。

 それぞれ百ページほどのリレー中編二作品を収録した本。表題作は、他愛ないと言っては申し訳ないが、軽い味のスリラー。ヘヴィー級のクラムリーを読んだ後には、この軽さが口直しに好適である。最終章で、それ以前の担当者の何気ない記述を伏線として活かしてみせた、エリザベス・フェラーズの手腕がお見事。……って、もしかしてその辺り、ちゃんと打合せしてあったのかもしれないけれど。そうくるか、という方向性の「意外な犯人」もいい感じ。

「弔花はご辞退」の方は、意外なほどきっちり構成された好編であった。カントリーハウスでの殺人という、ある種典型的なシチュエーションが楽しい。ストーリーの捻り、事件の奥行、終盤のサスペンスと、読み所も多い。

 おぼろげな記憶では、ミステリマガジンで訳載された時にどちらも読んだような気がするが、内容はまるで覚えちゃいない。再読だとしても、今回読んでよかった。

●今日はこの日記をアップしてから、街に出る。夕方に飲み会があるし、その前に書店に寄りたい。