累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ミドル・テンプルの殺人』 J・S・フレッチャー 論創社

●『ミドル・テンプルの殺人』 J・S・フレッチャー 論創社 読了。

 フレッチャーを読むのも三作目である。先の二作から、その作風がなんとなく見えている。それはつまり、
◆展開の必然性よりストーリーを動かすことを優先して、大きな偶然を多用する
◆ミステリの意外性とは次元の違う、なんだこりゃ、という意外な展開を唐突に持ち出す

 どちらも私の好みではない。なので本書も、期待値低めで読み始めた。そのおかげもあって、事件の輪郭や背景が少しずつ見えてくる地道な展開は、なかなかの面白さ。

 だが、読み終えてみると案の定、上記の作風そのままなので。残念ながら満足できる作品ではなかった。「終わり良ければ全て良し」の、逆である。フレッチャーはもういいや、という気になっている。……ってなこと言って実際は、もしも翻訳されたらきっとまた買うんだろうけれども。

 ところで気になる点が一つ。巻末解説にある「巧妙なミスディレクション」とはなんなのか。よく分からない。お気づきの方は、ネタバレで構わないので、教えてくださるとありがたいです。