累風庵閑日録

本と日常の徒然

『俳優パズル』 P・クエンティン 創元推理文庫

●『俳優パズル』 P・クエンティン 創元推理文庫 読了。

 新作芝居のリハーサルが進行中。この芝居の成功は、多くの関係者にとって人生の再起に直結しており、極めて重大な意味を持つ。ところが、開幕が危ぶまれるようなトラブルが一難去ってまた一難式に続出。ただでさえ個々の問題を抱えて神経質になっている関係者達は、頻発する大小の事件に翻弄されて不安定になってゆく。足元が揺らぐような不安感が、劇団内に蔓延する。はたして芝居は無事に開幕できるのか。そのてんやわんやが、犯罪の真相探求と同等のウェイトでもって描かれる。

 結末部分は、あまり他に類を見ないほどの大変な盛り上がりで。真相解明と同時並行して描かれるのは、(伏字)である。そして、真相の座りの良さはどうだ。ストーリー上の要請と、犯人捜しミステリの要請とが見事に合致した、上出来の結末であった。こいつは傑作。