累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ラスキン・テラスの亡霊』 H・カーマイケル 論創社

●『ラスキン・テラスの亡霊』 H・カーマイケル 論創社 読了。

 誰からも憎まれていたという被害者エスター・ペインの、その嫌らしさがあまり実感として迫ってこないのはどうしたわけか。それはたぶん、彼女の言動が直接描かれることがほとんどなく、他人が彼女を評した言葉ばかりが書かれているからであろう。つまり、描写ではなく説明なのである。もっともこの点は、私の感受性の問題なのかもしれんけど。

 真相の意外性はちょっとしたもので、もしもそれまでの物語に気持ちがノリノリであったなら、十分満足のいく結末だったはず。だが、上記のようなもどかしさに終始つきまとわれ、気持ちが醒めたままでたどり着いた結末には、唐突さが目についてしまったのであった。

 もしかしてハリー・カーマイケルの作品とは、相性が合わないのかもしれない。でも、主人公が事件についてぐるぐる思いを巡らす場面が何度も出てくる辺りは楽しめた。鍵にまつわるロジックも嬉しい。こういうのは好物である。

ブックオフで本を買う。
『大はずれ殺人事件』 C・ライス ハヤカワ文庫
これは嬉しい。いつでも新刊書店で手に入るつもりでいたら、いつのまにか全然見かけなくなってしまっていた。