●『死者はふたたび』 A・R・ロング 論創社 読了。
私立探偵が主人公だがハードボイルド色は薄い。二か月前に死亡したとされる人物が妻の前に現れたが、果たして彼は本物か偽物か。そんなシンプルな謎に対して、探偵は様々な可能性を筋道立てて検討する。そればかりか、脇役の警部補や医者を相手にディスカッションを重ねる。先日読んだ『誰もがポオを読んでいた』と同様に、ぐるぐる回っている感じが楽しい。そして、いかにもな真相が嬉しい。
決め手となる手掛かりの描き方がかなり微妙だし、解決部分全体がやけに駆け足である。気楽にさっと読める娯楽小説こそが、この作家の志向なのだろう。解決に至る緻密な論理の砦を、多くのページを割いて築き上げるような作家ではないのだ、たぶん。