累風庵閑日録

本と日常の徒然

夜光虫の系譜

●ちょっとしたきっかけがあって、横溝正史ジュブナイル「大迷宮」を拾い読みした。すると一点、個人的に興味深いことに気付いた。「面をかう人たち」の章から「暗やみの騒動」の章までの展開は、戦前のスリラー長編「夜光虫」の第二編、第三編辺りをベースにしているようだ。大幅にアレンジされているけれど、多くの構成要素が共通なのである。どちらの作品にも、次々と面を買ってはパーティーに行く人々、見事な歌を披露する少年歌手、その少年を誘拐しようとするたくらみ、といった題材が書かれている。

 三月十四日の日記に書いた「夜光虫の系譜」の中に、「大迷宮」もまた含まれることになる。この作品の発表は昭和二十六年だから、「不知火奉行」の前に位置するわけだ。