累風庵閑日録

本と日常の徒然

横溝正史『女シリーズ』の初出を読む

横溝正史関連の大ニュースが発表された。今まで草稿の断片のみ存在が分かっていた、横溝正史の謎の作品「雪割草」の全貌が判明したというのだ。素晴らしい。掲載媒体もそれを所蔵している施設も分かったから、その気になれば今週末にでも読みに行ける。だが現実的には、年明けに施設訪問を計画しようと思う。

●今月から新規の横溝プロジェクト、「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」を始める。シリーズ全十四話のうち、角川文庫に収録されなかった三編を除き、初出テキストと文庫版とを比較する趣向である。

 きっかけは光文社文庫の『金田一耕助の帰還』である。収録されたシリーズ作品を読んで、結末部分のあまりのそっけなさに驚いた。このシリーズって、解決部分をもっときちんと書いてなかったか? この疑問を横溝に詳しいMA氏に尋ねると、やはり改稿されているという。そのタイミングは初刊本のときらしい。

 というわけで事前準備として、初刊本及び後年の改版に収録された作品と、それ以外で角川文庫に収録された作品とで分けて整理しておく。

◆『金田一耕助事件簿』東京文芸社(昭和三十四年)に収録された作品
「霧」、「洞」、「鏡」、「傘」、「鞄」、「夢」

◆『金田一耕助の謎』東京文芸社(昭和四十八年)で追加された作品
「泥」

◆上記以外で角川文庫に収録された作品
「檻」、「瞳」、「柩」、「赤」

 最後のグループ四編は、初出と同等だとしても不思議ではない。改稿の実態は如何に? というのが興味の対象なので、それ以外の七編にこそ、読み比べの面白さがあるだろう。以上が事前の予測である。これからその辺りの実態を読んでいこうと思う。一応書いておくが、この件にはなんら新規性はない。自分の眼で確認することが重要なのである。

 ここでついでだから、発表順も整理しておく。
「夢」、「霧」、「泥」、「鞄」、「鏡」、「傘」、「檻」、「壺」、「渦」、「扉」、「洞」、「柩」、「赤」、「瞳」

●プロジェクトの具体的な進め方は次の通り。まず初出テキストをきちんと読み、次に文庫版を流し読みする。一応は両者の違いに注目して読んでゆくが、逐語的な比較はしない。

●さて、まずは「夢の中の女」を読む。……と、思ったけれど、データを整理してここまで書いて気力が尽きた。実際読むのは明日以降にする。