ロスマクって、こんなもんだったっけ? と思う。大きな偶然や強引な展開がちょいちょい出てくるし、読者が真相に到達できるような手掛かりも探偵の推理も全くない。もともとリュウ・アーチャーのシリーズにそういうものを求めていないので一向に構わないのだが、それにしたってこれほどまでにロジックに重きを置かない作風だったか。
内容はいつものロスマク節。脇役と思っていた人物が、途中で物語上の役割をがらりと変え、キーパーソンとして前面に出てくる。人物Aが実は人物Bであった、というパターンもお決まり。一見単純そうな失踪人探しが、意外な広がりと深みを見せる。最終的にたどり着く結末は、悲劇的で、複雑で、暗い。つまり、シリーズのファンとしては安心して読める出来栄えであった。