累風庵閑日録

本と日常の徒然

『アリバイ』 H・カーマイケル 論創社

●『アリバイ』 H・カーマイケル 論創社 読了。

 国内戦前短編集が二冊続いた後では、翻訳長編というだけで新鮮で面白い。それは個人的な事情だけれども。前半、失踪人探しのパートでは、次第に不穏な空気が高まってゆく展開にぐいぐいページが進む。特に、(伏字)するシーンの、サスペンスの盛り上がりが上々である。

 後半、事件の様相が固まってからは、捜査と検討との繰り返しにミステリの王道的面白さがあって、ぐいぐいページが進む。中だるみせずにちょいと気の利いた真相まで突っ走る、なかなかの秀作であった。