累風庵閑日録

本と日常の徒然

『サム・ホーソーンの事件簿V』 E・D・ホック 創元推理文庫

●『サム・ホーソーンの事件簿V』 E・D・ホック 創元推理文庫 読了。

 今回も安定の面白さである。個人的には不可能犯罪への興味よりも、伏線の妙にこのシリーズの魅力を感じている。特に伏線が秀逸だと思ったのが、「消えたロードハウスの謎」と「奇蹟を起こす水瓶の謎」の二作。「混み合った墓地の謎」は、真相にはあまり感銘を受けなかったが、謎の設定が強烈。

 他に気に入った作品は、途中で言及されることといい、結末の記述といい、どうやら作者がチェスタトンを意識しているらしいってのが興味深い「幽霊が出るテラスの謎」、真相がシンプルで映像的な「知られざる扉の謎」、ホーソーンが直接解決に関係のない部分でちょっとした手管を使うのが面白い「動物病院の謎」、といったところ。