累風庵閑日録

本と日常の徒然

『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●午前中は野暮用。

●『犯人は秘かに笑う』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 読了。

「名作で読む推理小説史」の六巻目、ユーモアミステリー傑作選である。気に入った作品とその理由とを挙げておく。水谷準「われは英雄」の、主人公の陽性なキャラクター。香住春吾「蔵を開く」の、軽快な会話と気の利いた伏線。結城昌治「喘息療法」の捻り。

 小泉喜美子「万引き女のセレナーデ」は、二人の登場人物がそれぞれの目的に応じてきっちり修練と経験とを積んでいる設定にぐっとくる。赤川次郎「駆け落ちは死体とともに」は、六十ページがあっという間の、圧倒的な読みやすさが凄い。

 これで「名作で読む推理小説史」のシリーズを読み終えた。全六冊の中では、本書が最も好みに合うようだ。さて、次の巻からは乱歩ネタが六冊続くことになる。せいぜいその辺りまでは、年内に読めたらいいのだが。