累風庵閑日録

本と日常の徒然

『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社

●『盗まれたフェルメール』 M・イネス 論創社 読了。

 絵画盗難を巡るスリラー。シリアスなトーンで書かれているが、所々にコメディめいた味わいがあって楽しい。特に、アプルビイがモーの店を訪れてからの騒動は出色の出来である。事件の謎は(伏字)し、アクション主体の展開なので、ロジックの面白さや真相の意外性にはちと乏しい。だが一点、ぼかして書くと、始めと終わりのつながりにはなかなか感心した。

 助演男優賞は、ホートン公爵に差し上げたい。あの登場シーンはかっこよすぎる。他にも、極めて有能で頼りになるキャドーヴァー警部補や、商魂たくましい画商ブラウンなど、登場人物が魅力的。