累風庵閑日録

本と日常の徒然

流の暁

ちくま文庫の『快楽亭ブラック集』から、「流の暁」を読む。

 なにしろ明治時代の文章である。改行がほとんどなく、ほぼ全てのページにみっしり文字が詰まっている。さぞかし読み辛いだろうと身構えていたのだが、意外なほど読みやすい。話し言葉を速記で記録したというだけあって、リズムよく読み進めてゆける。

 内容はどこかで読んだようなよくある展開の連続で、だからこそほとんど引っかかることなく頭に入ってくる。さらに、個別のエピソードこそありきたりだが、それらの積み重ねで意外な方向に話が転がっていくのが飽きない。単なる人情咄かと思っていたら、ある人物のやらかす犯罪にしっかり探偵小説風味があるのも嬉しい。

 ただ、そうは言っても現代の文章に比べたら、読むのがしんどいのは事実である。一気に通読はできないので、明日からは別の本を手に取ることにする。