●「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクト。今回は第十四作「瞳の中の女」を読む。
結論から書くと、初出と角川文庫とで基本的に異動は無し。初出の「インタービュー」が文庫では「インタビュー」になっているから、細かな用字の違いは探せばもっとあるかもしれない。前編が三節、解決編が四節の構成になっている。
内容は相変わらず簡素でそっけない。しかもこの作品ではなんと、事件が(伏せ字)というのだからなんとも。こういう作品こそ長編化か、せめて改稿されたものを読みたくなる。
●さてこれで、去年末から取り組んできた「横溝正史『女シリーズ』の初出を読む」プロジェクトが完結した。改稿された作品では、初出の矛盾が解消されたり、犯行の経緯が変更されてより自然な流れになったり、といった例が見られる。改稿無しの作品では、初出の矛盾がそのまま文庫版に残っている例があり、これはこれで興味深い。
●来月からの横溝プロジェクトは、「横溝正史が手掛けた翻訳小説を読む」を始める。正史作品の元ネタになったかもしれない海外小説に、ひとつでも出会えれば上出来なのだが。読む予定の作品には、訳者の名義が正史でないものや、訳者名未記載のものもある。作品の選択は、扶桑社文庫『鍾乳洞殺人事件/二輪馬車の秘密』の巻末にある「横溝正史翻訳リスト」に基づくものとする。