ちょいとフィクションに食傷気味なので、お手軽に読めそうなノンフィクションを手に取った。読書の気分転換に本を読むのである。
高校生の頃を振り返り、なぜか身内に湧き上がる不思議な情熱について語る「平成8年8月8日の奇蹟」が秀逸。受験の年の夏、そうだ! 八の付く駅八カ所に行って切符を買うぞ! と思い立ってしまうのであった。こういう突発的な謎の熱は、身に覚えがあってじわじわと可笑しい。
続編とも言える「平成22年2月22日の死闘」もまた、にじみ出る可笑しさがある。自分もその一員であることを自覚しつつ、マニア達の異様な行動を珍獣を観る視点で語る。己の価値観のみに従って行動するマニアは、時に意図しない滑稽さを醸し出してしまう。そしてこのような「死闘」も身に覚えがあって、苦笑するしかない。
それにしても、こういう旅ネタ本を読むと旅行に行きたくなる。つい先日長崎に行ったばかりなのに、次はどのタイミングで行こうかと本気で考え始めた。どこに行くかはもう決まっている。具体的な行程もほぼ決まっている。決まっていないのは日付だけである。この際もう、ただ漠然と秋としか想定していない旅行の日付をバシッと決めてしまって、さっさと航空券を予約してしまおうかとも思う。