●『孤独の島』 Ｅ・クイーン ハヤカワ文庫 読了。
クイーンの名前が無ければまず手に取ることのなかった作品である。だが、実際読んでみるとこれがなかなか面白い。クイーンの名前から連想する種類の面白さではないけれども。
悪人が強奪した現金と愛娘を人質に取られた主人公とを巡る物語は、主題が次々に変わって紆余曲折甚だしい。たとえば、人質の運命は、犯人のアジトはどこか、人質奪還の首尾は、（伏字）は、等、等、等。予想外の展開が連続し、ぐいぐい読める。
主人公が推理の冴えを見せる場面もあるにはあるが、その一方ロジックではなく勘と経験とで断定を下す場面もある。推理の面白さをメインに据えていないのだろう。展開の面白さを十分に味わえて、ええと、佳作と秀作の中間くらい。
