累風庵閑日録

本と日常の徒然

『黒岩涙香探偵小説選II』 論創社

●『黒岩涙香探偵小説選II』 論創社 読了。

 収録作品中では、やはりロジックの面白さを前面に出したものが好みである。それはつまり「紳士の行ゑ」、「血の文字」、「帽子の痕」の三編で。前二編はどちらも外連味はないが、着実地道に捜査を進めてゆく過程を描いて、その点も好み。「帽子の痕」は十ページにも満たない小品だが、些細な違和感を出発点とする推理の冴えが楽しい。

 以上三編は全て原作はガボリオで、しかも同じ作品集『バチニョルの小男』から採ったのだという。せっかくだから『バチニョル~』の一冊を丸ごと、まとまった形で翻訳出版してくれないものか。

 他に気に入った作品は、ショートショートで書くサイコスリラーという異様な「父知らず」、捻りが効いている「間違い」といった辺り。