累風庵閑日録

本と日常の徒然

横溝正史が手掛けた翻訳を読む

●横溝プロジェクト「横溝正史が手掛けた翻訳を読む」の第二回をやる。

◆カール・ヂ・ホッジス「狐と狸」(大正十四年『新青年』)
 大西洋横断汽船に乗り合わせた、三人の宝石泥棒。どうやら全員が、ジャガーノートのダイヤモンドとやらを狙っているらしい。題名が暗示するように、化かし合いの話である。捻りは用意されているが、まあどうということもない。それにしても、原題はどうなっているのだろうか。

レスリー・トーマス「弱点に乗ぜよ」(大正十四年『新青年』)
 舌先三寸で相手を騙して収入を得ているレヴァート君。今日も今日とて、列車の中で出会った田舎者丸出しの若者に目を付けた。相手の話を聴くと、どうやら物になりそうで。自らのモットー「弱点に乗ぜよ」に従って、早速彼の舌が動き始めた。だいたいオチは予想がつく。他愛ない話である。