累風庵閑日録

本と日常の徒然

『死体は散歩する』 C・ライス 創元推理文庫

●『死体は散歩する』 C・ライス 創元推理文庫 読了。

 相変わらずの疾走感が素晴らしい。途中あまりにも強引な展開にひっくり返りそうになったけれど、流れに乗って楽しむつもりならこの程度のことを気にしちゃいけない、と思い直す。いつまで経っても結婚の手続きに出かけられないジェイクとヘレン、という繰り返しのくすぐりが楽しい。西尾正のねっとりした作風にしんどい思いをした後の口直しには、まことに好適な作品であった。

 物語の三分の一ほどで、それまでのある二カ所の記述から犯人の名前だけは見当が付いてしまった。真相の全体像はちょっと複雑で、結末前に読者がたどり着けるとは思えないけれど。キモとなるのが動機の問題で、(伏せ字)という趣向はなるほどと思う。だが、解決部分でマローンに説明されないと分かるわけないわな。

 犯人はとある設定によってカモフラージュされているのだが、その遠因となった、(伏せ字)が哀しい。