累風庵閑日録

本と日常の徒然

午前零時の男

●谷中の全生庵に、幽霊画の展示を観に行ってきた。今回の主目的は、去年九十四年ぶりに発見されたという、鏑木清方の幽霊画である。うつむいて顔を見せないまま、捧げ持つように茶碗を差し出す女性像。一見普通の人物画のようだが、青白く骨張った指が尋常の者でないことをうかがわせて、じわじわと不気味さが募る。

 他に、絵師の名は失念したが蚊帳の向こうに座ってうつむく幽霊の目付きが恐ろしい。無表情のようでいながら底知れぬ恨みと憎しみと哀しみとを湛えたような。おぼろげな姿なのに、蚊帳を通して見える部分だけは比較的明瞭に描かれて、不合理な不気味さもある。

●お願いしていた本が届いた。
『午前零時の男』 紅東一 盛林堂ミステリアス文庫
近いうちに私家版のエバーハートも届くはず。そっちも楽しみである。そういえば、ポール・アルテの新刊も近々届くはずだ。楽しみである