累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ダイアルAを回せ』 J・リッチー 河出書房新社

●『ダイアルAを回せ』 J・リッチー 河出書房新社 読了。

 粒揃いの傑作短編集である。その面白さは、捻りとオチと切れ味にある。こう書くとなんともありきたりな表現だが、本書にはこれらの要素が実に高い水準で満ち満ちている。

 カーデュラものが三編、ターンバックル部長刑事ものとその姉妹編とが合わせて五編、そして非シリーズものが七編収録されている。どれもこれもゴキゲンな出来栄えなのだが、あえて順位を付けるなら非シリーズ作品を上位に置きたい。同一主人公という枠組みが無い分だけ、物語の転がりっぷりが奔放である。