累風庵閑日録

本と日常の徒然

『風間光枝探偵日記』 論創社

●『風間光枝探偵日記』 木々高太郎海野十三大下宇陀児 論創社 読了。

 表題シリーズは三人の作家の持ち回りで書かれているから、作風が統一されておらずとっ散らかっている。分量はどれも二十ページほどで、展開があっけなく結末はそっけなく、まるで梗概を読んでいるようだ。あまりのことにこの一冊を通読する気にならず、シリーズ全九編を読んだ段階で中断した。そんななか、木々高太郎の「離魂の妻」と「金冠文字」とは、謎の設定がちょっと面白い。海野十三「什器破壊業事件」は、とぼけたユーモアが読み所。海野十三が担当した三編は、実は帆村荘六ものでもある。

 さて、一週間ほどインターバルを置いて後半を読む。
海野十三が単独で手掛けた、科学捕物帳と銘打たれた風間三千子シリーズは、馬鹿馬鹿しくてとぼけた味わいがあってなかなか面白く読めた。ただし、時局臭濃厚な最終第四話を除く。この四編は帆村壮六ものでもある。

 これも海野十三作の、戦後に書かれた蜂矢風子探偵簿のシリーズは、そのうちの二編があまりに他愛ない。最終第三話は、どうもこれは評価不能。この三編は、ただ読んだだけであった。