累風庵閑日録

本と日常の徒然

成城大学公開シンポジウム

成城大学で、「成城を住まう 都市、住宅、近代」と題する公開シンポジウムを聴講してきた。目的は、テーマのひとつ「探偵小説のトポロジー 横溝正史と成城のまち」である。成城の街と正史の創作との関連を論ずる内容だが、詳細は省略。時間配分が三十分しかなかったので、ちと物足りなかった。

 それはそれとして、聴いていて気付いた点がひとつ。村落共同体を物語の基盤に据えたいわゆる岡山ものの対局に、郊外生活を基盤に置いた「白と黒」がある。そしてその中間に位置する、主として東京を舞台にした作品も数多くある。

 「白と黒」のようにはっきりと打ち出されてはいないが、これら東京ものもまた、都市生活・郊外生活を基盤にしているのだ。ということは、書かれる作品が岡山ものから東京ものへと変わった時、物語構築の土台が根こそぎ変わり、それに伴って作劇法も大きく変わったと考えられる。今までそういう視点で読んだことはなかった。ただ単に舞台が東京だ、という意識しかなかった。