累風庵閑日録

本と日常の徒然

『シャーロック・ホームズに愛をこめて』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫

●この土日で、ちょいと一泊ででかけてきた。かつての飲み仲間と再会して、日帰り温泉でひとっ風呂浴びた後飲んだくれる。

●遠征のお供として持って行った、『シャーロック・ホームズに愛をこめて』 ミステリー文学資料館編 光文社文庫 を読了。

 本の感想は、内容だけで決まるものではない。それ以外の様々な要因、たとえば直前に読んだ本からも影響を受ける。物語としてはメリハリに乏しいクロフツの宗教本の後に読むと、とにかくストーリーがあるというだけで、面白いのなんの。

 特に面白かったのは以下の作品。なるほどこの作者らしい真相の山田風太郎「黄色い下宿人」、ネタと趣向とを詰め込んだ夢枕獏「踊るお人形」、真相が気に入った北原尚彦「ワトスン博士の内幕」、犯行手段と細かなくすぐりとが光る柄刀一「緋色の紛糾」、といったところ。

 深町眞理子「シャーシー・トゥームズの悪夢」を読むと、時事ネタを盛り込んだパロディが十分にその内容を理解されるには、同時代の読み手の眼を必要とすることが分かる。江戸川柳が、当時は当たり前だったであろう事象を詠んで、ときに難解であることと同様である。