累風庵閑日録

本と日常の徒然

『ピーター卿の事件簿II/顔のない男』 D・L・セイヤーズ 創元推理文庫

●『ピーター卿の事件簿II/顔のない男』 D・L・セイヤーズ 創元推理文庫 読了。

 表題作「顔のない男」は、列車の中の会話だけから推理を進める冒頭部分が私の好み直撃で、大変に面白い。結末は(伏字)という点が引っ掛かって、ちと座りが悪いけれども。

「因業じじいの遺言」は、巻末解説に引用されているダグラス・トムスンの「脚色したクロスワード・パズルにすぎない」という評価に概ね共感する。だが部分的には、ちょいちょい挿入される言葉、たとえば「ウイスキーソーダを持ってきてくれ!」や、ハンナの態度の変化から、関係者達がパズルを解くのに夢中になっている様子がありありと伝わってくるのが楽しい。結論として、その一点のおかげで読後感はなかなかのもの。

 その他、「白のクイーン」のシンプルさも、「証拠に歯向かって」のグロテスクさも、いい感じ。

 ところで、巻末解説には第三巻もいずれ出るようなことが書いてあるのだが。残念なことに実現しなかったようで。

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