累風庵閑日録

本と日常の徒然

『エーミールと三人のふたご』 E・ケストナー 岩波少年文庫

●『エーミールと三人のふたご』 E・ケストナー 岩波少年文庫 読了。

 久しぶりに再会して、海辺の街で夏のバカンスを楽しむ、エーミールと「探偵」達。彼らがそこで経験するのは、輝かしい夏の喜びばかりではない。少年から大人になるにしたがって、誰もが直面し乗り越えなければならないほろ苦さが、本書のテーマのひとつのようだ。

 ストーリーは、実際の所どうということはない。ちょっとしたハプニングに遭った時の、彼らの言動が読み所。描かれているのは、まっとうさ、である。彼らは迷いもするし間違いもする。欠点も持っているし不安を抱えてもいる。だが同時に、自らを律する基準を持ち、しっかりと自分の足で立って前を見据える力強さを持っているのである。